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    f1na1cuR10ovaSn

    @f1na1cuR10ovaSn

    流花短編。

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    流花(の直前)。流くんが夢を見るファンタジー要素多。何でも許せる方向け。
    流くんはこの後花くんに告白します。
    高3春頃の設定。

    #流花
    flowering

    瑠璃美しい鯨が悠然と記憶の海を泳ぐ。
    水面は純度高く透明で、空の色を映し出し、太陽の光を一心に浴びて、反射し、きらきらと輝く。





    生きてきた、バスケとともに。
    バスケがあれば他は何も要らない。
    一途だった。


    あいつのバスケを体育館で初めて見た時、心が躍った。

    連れとともに屋上に現れた、オレと同じ目線のそいつ。初っ端から食ってかかってきたが、その後やって来た知らない女(後に桜木にバスケを勧めた、どあほうのお気に入りだと知った)が何か言うのを突き放したら突然オレを殴ってきた真っ赤なあいつ。意味が分からなかった。そのとき奴の名前を覚えた。

    そんな出会いを経て数日後、桜木がキャプテン相手にバスケ勝負をすると耳にした。バスケと桜木。興味から足が動いた。

    桜木はルールも何も知らないどシロートだった。ただ、赤木キャプテン相手に繰り広げるバスケは突拍子も無く、突然目を見張る動きをしたり、とにかく予測不能で、目を奪われていた。いつの間にか周りも期待していた。

    あいつがバスケを始めたらどうなる?
    未知数の、まっさらな原石が輝く瞬間、
    オレはお前の傍に立ちたい。
    胸が早鐘を打ち高揚した。


    オレの記憶に赤が交じる。
    目が覚めるような鮮烈が流れ込む。


    一度バスケを辞めると言ったこと、
    それでもお前は戻ってきた。
    柔道部に勧誘されていたこと、
    それでもお前の意志でバスケを選択したと聞いた。

    自分だけが未経験なまま、それでも勝つために自ら考え導き、内に潜む繊細さも含め鼓舞し、自身を凌駕し成長する。

    お前の力強い瞳は、心が慄える言葉は、伸ばされる掌は、瞬発や跳躍の脚力は。
    全身がバネのような靭やかさ、スポンジのような吸収力、細胞が反応し居るはずのない場所から相手のボールを止めたこともあった。
    其れに元々備わっていた特化したスタミナ、パワーといったフィジカルと、開花するアビリティ。
    そのことに、

    恐れからじゃなく、
    歓喜で身体がわなないた。

    天性の、ダイヤモンドが此処に居る。
    自らを抱きしめるように腕を抱え震えを抑え込んだ。


    海が夕日に染まる。鯨が紅く染まる。
    鯨は復活を、ダイヤモンドは無敵を意味するらしい。

    バスケから一時離脱したあいつと体育館で再び相見えた眼は感情が激発していて、それが共鳴し発奮され胸がどくりと打ち響いた。

    ずっと見ていたい。
    この鯨のように美しい姿を
    手の届かない距離を泳ぐそれに


    遠く居た鯨がこちらに近付き突然小舟に体当りした。弾みで海に落ちたオレの周りをゆっくりと巨体が回る。息苦しくはなく、むしろ心地よい。
    しばらくすると手に胸鰭が触れた。撫でるようにそっと。
    それがゆっくり人間の手に変化し、きゅうと指先を掴む。
    オレと変わらない大きさの掌。

    お前はこんな風に触れてくるのか。
    こんなにも柔く。
    それを知っただけで、泣きそうになる。

    ゆらゆら、こぽり
    二人の間を透明が漂う。
    視界は一面の深海と目前の赤。


    (見ろよ、ルカワ)

    自分とあいつの手をじっと見つめていると、
    柔く触れてるその指がオレの指と互い違いに絡ませ、貝殻のように密着する。

    (もっと触れてもいいぜ)

    引き寄せられたその手は、そのままあいつの唇に触れた。
    小さな泡が光に吸い寄せられる。

    (オレはずっとお前しか見てねーよ。お前だってそうだろ?)

    正面の桜木はくつくつと笑みを零した。

    (まぁお前が断ってもオレは追いかけるのを止めねーけどな。必然的に傍に居るんだよ、オレらは。飽き足りることなんかねえ。一生お前を追ってやるよ)

    体が蕩き、桜木の体を擁いた。水の抵抗を僅かに感じた。

    月の光がきらきらと海の中を照らす。
    あたたかな熱に包まれさらにさらにと隙間をなくす。

    とくん、とくん。
    こぽり、こぽり。

    心音に微睡む一瞬、オレの背中に回す桜木の腕が緩んだ。
    再びできた透き間から視線を上げると、奴は凪いだ瞳でこちらを見つめた。

    (なぁ起きろよキツネ、お前が此処に居るとオレがつまんねーの。早く会いに来い)

    至近距離で捉えた微笑みと、聴こえた"声"を最後に、桜木がオレの腕の中で水沫となって消える。

    (…ああ、そうだな。今からお前に会いに行く)
    その余熱を手のひらに包んで。





    「ルカワ、おはよう」

    窓明かりに瞬き、視線を横に向けるとゆっくりと赤が映る。柔い眼差しはそれは幸せそうに。
    オレは目を細め、その指と指を絡めた。

    「桜木、おはよう」
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