SS④「そういえば、家守さん知ってます?研究棟の喫煙所無くなるの。」
「…え?」
パラパラ、と貰った資料を立ったまま流し見していた時だった。さも軽度の世間話のように資料を届けに来た同僚は話す。
「あ、今日眼鏡なんですね。めずらしい」
その後の会話は、あまり記憶にない。ぁ〜うん、だとか。そうだね、だとかなんの面白味もない返答をしたような気がするだけだ。
バン!内開きのドアが数度のノック後応答を受けて勢いよく開く。彼は育ちが良かった。
「所長ッッッ!!!!!!!!!!」
「…来たね、家守くん。」
「来たねじゃないですよ喫煙所の話ッ、正気ですか!?貴方も無しじゃ生きられないでしょ!?」
まるで来ることが分かっていましたと言わんばかりの口調、体制。実際、所長は分かっていた。そろそろこの話を聞きつけた家守真城がこの所長室のドアを開け放つことは。
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