朝、窓を開けた扶揺は小さく息をのんだ。
見慣れた窓の外の景色が、どこも真っ白く覆われている。雪が積もるかもしれないという天気予報は当たったらしい。この暖かい地では珍しい雪景色は、いつもなら淡泊な扶揺の心すら躍らせる。だが、今日はそんな景色すら、心の重しを軽くしてはくれなかった。
冷気に肩をすくめ、窓を閉める。もう一度ベッドに潜り込んだところで、枕の脇に置いたスマホにメッセージの通知が表示される。南風だ。
『雪、すごいな。欠航だし午後休みとっちゃった。お前は?』
欠航になったからって休むか? と白目をむく。扶揺は今日は元から休みだ。そう返すとすぐに返信が返ってくる。
『じゃ、午後にお前のとこ遊びにいく。なんか食べたいものとかあるか?』
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