可愛い存在 部下の神官を可愛いと思うのは間違っているだろうか。
両袖に入れた腕を組みながら、慕情は小さく頭を振った。
おかしいに決まっている。何を考えているのだ。
だが、頭の中でもう一人の自分が、ふんと笑う。自分を騙してなんになる、と。
扶揺。自分より年若い神官。
新しい技を習得した時に顔を輝かせて真っ先に披露しに来る姿。南風を揶揄ってやった話を楽しそうにする姿。そんな彼に、思わず自分の頬も、出来立ての饅頭のように緩んでいる。
――そして気づいたのだ。
これは何かを「可愛い」と思う感情なのではないかと。
数百年生きてきて、自分は、何かをこんなに可愛いと思ったことがあっただろうか。
能力が高く、覚えも早い彼を、可愛がっていたのは確かだ。
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