ショコラの祈り「失礼! 今、入っても?」
と、開店したばかりの店の扉からひょっこり顔を出して、声をかけてくれた志献官さん。店内でチョコレートの箱詰めに勤しんでいた私たち店員は、全員目を見開いた。
舎利弗純弐位、の、本物が、そこに立っていたからだ。
防衛本部志献官のルーキーで、将来のエース候補だと新聞によく名前が載っている有名人。姿形があまりに現実離れして美しいので、ブロマイドは飛ぶように売れていると聞いた。
「ボンボン・オ・ショコラ、の看板を見たの。このあたりに売っているチョコレートボンボンは、中にウィスキーが入っているものばかりでしょう? フランボワーズのものを探しているんだけど」
小首をかしげながら店内に入ってくる彼を見て、店の前を歩いていた人たちも吸い寄せられるように集まってくる。にわかに活気づいた店内で、私たちはありったけの種類をカウンターに並べた。
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