家に帰ると猫がいる。推定一歳の黒猫で、両眼の色が違う。名前はオロルン。
まるで他人事のような言い種だが、別に勝手にやってきて住み着いたわけではない。家はペット可ではあるが、マンションの高層階である。
スラーインは元来犬派だ。なので住まいを選ぶとき、いずれ犬を飼うことを想定してペットの飼えるマンションを選択した。そして、そこにまんまと付け入られてしまった。友人のマーヴィカに『君は絶対にこの猫を好きになる』と謎の自信で押し切られて、里親が見つかるまでという条件ではあるが猫と暮らすことになってしまったのだ。
黒猫というものは他の毛色と比べて飼い主が見つかりにくいのだそうだ。まだ若いが、既に成猫なのもそこに拍車をかけている。スラーインからすれば猫の色など何でも大差はないのだが、確かに黒猫というものは昔から不吉なイメージに結びつけられやすい。くだらない話だ。
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