あたたかいのは、その微笑み───────────
今日はなんだか、学生達がいつにも増して騒がしい。
日常的に樹庭のあちこちで議論しているのには慣れたものだし特に気になるほどではないだけれど。
それとは違ったどよめき、のようなものが、同じ方向───つまり、わたしの向かいから急ぎ足でやってくる人達から聞こえてくる。
──俺、最初見ちゃいけないものを見たのかと…。
──あながち間違ってないが、今見たことは忘れるべきなのが賢明な選択だ。
最後に通り抜けていった二人は、どこか怯えた様子で足早に去っていく。
不思議に思い遠くなるその背を見ていると、ふと思い至る。
「皆さん、一体どうしたんでしょうか…。この方向の先にはアナイクス先生の実験室しかありませんし……え?もしかして…」
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