あれから幾度季節は巡ったのだろう。
桜が咲き乱れ、天に星々の川が駆け巡り、実りの豊かさに感謝し、そして寒さの中で春の訪れを待つ。
目に映る景色は移り変わり、耳に聞こえる鳥たちのさえずりの音色は変化し、肌は温かさが暑さに、そして涼しさ、寒さに変わる。
何度も繰り返された季節の移ろい。そして、それらを教えてくれたのは、風早。
本来は季節とともに変わる表情を見ては些細なことで喜ぶけれど、今の私がそれらから感じ取ることはない。
あの日から、風早が私の目の前を去ったあの日から、私の中の時間は止まったまま。
「立派な王になってください」
今でも耳に残る風早の声。
切なげな響きの中に含まれている優しさ。
それはきっと彼の願いと望みと、そして本音が入り交じった証拠。
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