手を離さないで 夜の神社は苦手だ。今日みたいな日は、特に。
だけど、可愛い彼女から浴衣デートに誘われてしまったら、断るなんて選択肢はないよね。
「すっごい人だね」
石畳の参道は予想通り人で溢れていた。身動きが取れないほどではないが、ゆるい上り坂になっている所為もあってか、牛歩の如き状況だ。参道の真ん中は神様の通り道だから端の方を歩きなさい、と言われて育った覚えがあるけれど、この状況でそれを守るのはなかなか難しい。なるべく真ん中でも端でもない辺りを狙いたいんだけど。
人の流れに乗ってじりじりと進むうち、知らず知らずのうちに人垣の一番端っこへ移動してしまっていた。両脇の灯篭に灯された火が揺らめいているのがよくわかる。
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