人食いの化け物の話 5(終)9
「人食いには───人食いが見分けられる」
人食いのヘマはかつて黒燕にそう言った。
そして、人食いを探すためだと言って5人も人間を殺した半ば狂った殺人者は、「人食いがいると聞いてこの街へ来た」と言った。
ならば、その殺人者にそう話した何者かこそ、人食いの化け物である可能性がある。
しかし、肝心のその殺人者は何も話すことなく憲兵の目を盗んで首をくくってしまったので、黒燕はその痕跡を辿るのに苦労した。
その男は泊まる宿を転々と移しており、この街にいつから滞在しており、どこから来たかさえ探るのは困難を極めた。
あちこちで聞き込みをして、結局はざっくり北の方から来たらしいという程度の情報しか掴めなかった。
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