『月と桜と君と』「花見しようぜ」
出前から帰ってくるなりニカッと効果音がつくような豪快な笑顔と共にそう声がかかった。
「花見?」
「おぅ!さっき空飛んでた時見えたんだ。今が満開だからよ。今夜店閉めた後に夜桜を肴に一杯やろうぜ」
いたずらっぽくお猪口を煽る真似をする白黒の髪の男は、この店の店主、ブラッドリー。
「へぇ。そっか、いつもどこかしらで咲いてるから気づかなかったな」
鍋のものをかき混ぜながら振り返った青灰色の髪の男はネロといった。
「決まりだな。よし、じゃぁ次いでだ、花見弁当、売ろうぜ」
「はぁ? 今から作んのかよ」
「てめぇならそんくらいできんだろ?」
「まぁ、そりゃできるけど……」
「ぜってぇ売れるぜ」
「はぁ。わかったよ」
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