時緒🍴自家通販実施中 短い話を放り込んでおくところ。SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。無断転載禁止。 ☆quiet follow Yell with Emoji Tap the Emoji to send POIPOI 192
ALL 狡宜版深夜の創作60分勝負 文体の舵をとれ ワードパレット 夏五版ワンライ 800文字チャレンジ 時緒🍴自家通販実施中TRAININGお題 黄昏【見間違い・騙されてあげる・終わらせない】諫早の祭りに違法薬物の売買の検挙のついでに行った狡噛さんと宜野座さんが、学生時代のことを考えたり手を繋いだり来年の約束をしたりする甘い狡宜です。18時の続きです。光の道 狡噛と諫早の祭りに行ったのは、彼の提案した通り七月末のことだった。 とはいえ俺たちは二人きりだけでなく、行動課全員と、協力を申し出てきた長崎の公安局の刑事課監視官、執行官たちがそこにいた。今夜、ここで違法薬物の大規模な取り引きが行われるとのタレコミがあり、その確実性から俺たちは祭りの他はさびれた街にやって来ていたのだった。公安局は当初情報に及び腰だったが、俺たちが出るとなると出動しないわけにはいかなかったのだろう。祭りが仕事で潰れたことは悔しかったが、それでも夕暮れ時に太い川に浮かぶ灯明と、橋や川辺を飾る明かりが美しく、道ゆく人々はその灯りと終わってしまった太陽に薄ぼんやりと照らされていて俺は見惚れてしまった。そして俺はそれに、古い時代の詩人の短歌を思い出す。 3065 時緒🍴自家通販実施中TRAININGお題 23時【声が聞きたくて・いい子・名前を呼んで】狡噛さんと須郷さんが潜入捜査に入って、寂しがる宜野座さんが仕事中毒になってしまいます。花城さんが出てきます。夜二人きりで秘匿回線を使って話すのはいつも…というお話です。ワーカーホリック 狡噛が須郷とともに任務につくことになった。 それ自体は珍しいことではないが、今回は彼らはとある新興勢力のギャングに潜入捜査することになっており、それは俺の胸を強くざわつかせた。自分の理性的な部分では、彼らの命を心配しているわけじゃないと思う。俺だって今回の任務以上に危険なそれについてきたし、そのどれもどうにか危険を回避し成功させてきた。けれどいつだって狡噛と離れる時、これが最後ではないのかと、感情が震えてしまうのだった。馬鹿げていると思う。けれどそれは本能みたいなもので、自分ではどうにもならないのだから困ったものなのだった。 「そんなふうに恋人の不在を仕事で埋めてると、中毒になって戻れなくなっちゃうわよ」 3434 時緒🍴自家通販実施中TRAININGお題 18時【明日の約束・一番星・子供みたいに】諫早の祭りに行こうと誘う狡噛さんと、そんな誘いに思い出を残すためじゃないかと勘繰ってしまう宜野座さんのお話です。お酒を飲みながら仕事の話をしたり、ぽつぽつ先のことを話す割と甘い狡宜です。光とゆうつづ「なぁ、今月末、諫早に祭りに行かないか?」 まるで子どもが気まぐれに明日の遊びの約束をするように、そう狡噛がこちらに言い放ったのは、彼が俺の部屋を訪れてしばらく経った、土曜の夕暮れ時のことだった。狡噛は窓際に置いたソファに座り、真剣な目でじっと俺を見つめていた。一方の俺はその時父の遺した酒を氷の入った二つのロックグラスに開けていて、飴色がたたえられたそれを一つ彼に差し出し出すところだった。でも、急な誘いに思わず手をすべらせそうになってしまったのを、今でもあの時の彼の表情とともに印象的に覚えている。 単純な言葉だったというのに、その誘いに俺はすぐには答えられなかった。というのも、月末はずいぶん先の話だったし、仕事柄イレギュラーが多かったから、予定を組むのが難しかったという事務的な理由があったのだ。花城に話したら調整してくれるだろうとも思ったけれど、彼がわざわざ言い出すことなのだからと、俺は勘繰ってしまった。例えば、またどこか遠くに行ってしまうのではないか、その前触れなんじゃないか、だから最後に特別な思い出を作ろうとしているんじゃないかって、恋人を信用しない馬鹿げたことを思ったのだ。 3648 時緒🍴自家通販実施中TRAININGお題 15時【お菓子・どこからともなく・油断】インド系の入国者の事件を解決した行動課。関係者からもらった紅茶で一息つこうと言う花城から隠れていちゃいちゃする狡宜のお話。実在の団体名が登場しますがフィクションです。狡噛さんがいたずらっ子な感じです。15時、チャイの下で「こんな時間だし、そろそろ休憩にしましょうか」 そう花城が言ったのは、行動課のオフィスにかかった時計の針が十五時をさした時のことだった。 ここにおいて、こういった休憩は珍しくない。というのも、俺たちはあくまでも実働部隊だったので、事件が起こらない日はくだらないデスクワークにかかりきりになるだけで、はっきり言って暇だったからだ。他の課と折衝をする課長の花城だけがその例外だったが、彼女が休憩したいというのだからここは従っておくのが賢明だろう。 須郷が立ち、無言でコーヒーサーバーに向かう。しかし花城は彼がカップを手に取ったところで止めて、「今日は紅茶にしない?」と言った。 「紅茶、ですか?」 須郷が言う。誰が決めたわけでもないが、このオフィスには泥水のようなどす黒くまずいコーヒーを飲むという習慣があった。そう、誰が決めたわけでもないのに、俺がここに来た時には既にそうなっていたのだ。もしかしたら外務省全ての課がそうなのかもしれない。とはいっても、食堂のコーヒーはもう少しましな味だったのだけれど。 3467 時緒🍴自家通販実施中TRAININGお題 3時【中途覚醒・冷たい・人の気も知らず】狡噛さんの部屋でセックスをした後夜中に起きてしまった宜野座さんが、ベッドを抜け出し炭酸水を飲みながら出島の夜景を見るお話です。36種の時間のワードパレットをお借りしました。ネオンと炭酸水 揺らぐ浮遊感の中で目が覚めた。照明が落とされた真っ白な天井から目をそらし、辺りを見回すと、眠り入る前と同じ景色が丑三つ時をいくらか過ぎた暗がりの中広がっているのが分かる。 そこは自室と比べたら、ずいぶんと殺風景な部屋だった。黴の生えたような古い文庫本や新書、図録などがそこかしこに積み上げられ、今時手に入れるのも難しい旧式のレコードプレーヤーなんかに、縁が朽ちかけた、銀のスパンコールのドレスを着た、黒人の女たちが笑う紙製のジャケットが立てかけられている。トレーニング用の器具には昨日散々楽しんだ時の黒のワイシャツがかかっていて、あぁ、クリーニング用のドローンを使うのを忘れたな、と俺はぼんやりと思った。 3565 1