時緒🍴自家通販実施中 短い話を放り込んでおくところ。SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。無断転載禁止。 ☆quiet follow Yell with Emoji Tap the Emoji to send POIPOI 192
ALL 狡宜版深夜の創作60分勝負 文体の舵をとれ ワードパレット 夏五版ワンライ 800文字チャレンジ 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑨問二:赤の他人になりきる視点は自分と意見の異なる人物にすること。彼女の赦し 課長室のソファに座り、テーブルで昼食を取っていると、法定執行官となった先輩が現れた。彼女は今は私の部下だ。今までの何でも私に指示をしていた人とは違う。 「一緒に食べてもいい?」 彼女の手には公安局内で売られているサンドイッチの包みがある。私はそれに「いいですよ。私はすぐに終わりますけど」と返し、また弁当に箸をつけた。塩鮭、卵焼き、桜でんぶ、プチトマトにブロッコリー、それから白米にふりかけ。質素なものだ。想像していた課長としての生活とは違い、豪華な昼食を取ることもままならない。 「いいの、一人きりだとさすがに寂しいから。それに私早食いだよ」 先輩が言う。私はそれに胃がきりきりした。私は先輩の祖母を東金に差し出した張本人だ。彼女の仇と言ってもいい。なのに先輩はそんな私に優しくする。消去法で言ったら、あの東金に情報を差し出した人間なんて、頭のいい先輩だから気づいているだろうに。 951 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑨方向性や癖をつけて語る問一:A & B二人の登場人物を会話だけで提示する。AとBの事件「だからさ、それは間違ってるんだ、前提条件がまずおかしい」 「前提条件? 犯人がいる、被害者がいる、それのどこがおかしい?」 「犯人には背景があるべきだろう? なのにこの犯人はとってつけたような犯罪を突然犯しただけで、何の理由もなく女を殺しているんだ」 「無秩序型の犯人かもしれないじゃないか」 「じゃあ無秩序型を再定義しよう。社会不適応で、孤立していて、それほど知能も高くない。外見に無頓着で衛生状態の悪いところに住んでいて、総じて無秩序だ」 「そのままじゃないか。この女は突然殺された。理由もなく。それに犯人が残していった残留物も多い。ダンゴムシにかかればすぐにD N Aが特定される」 「でもダンゴムシはまだデータを寄越さない」 884 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑧声の切り替え問二:薄氷読者に対する明確な目印なく視点人物のPOVを数回切り替えながら書くこと。サンシャイン・オブ・ラブ2 ラジオを聴くのをやめた狡噛は、ソファの隣に座り、デバイスを操作する恋人のうなじにキスをした。拒否はされなかった。宜野座は基本的に狡噛の欲望を拒否しない。愛されていると思うが、彼が仕事でヘマをした時は別だった。彼は罰されたいと思っている。狡噛の青い目で、宜野座は罰されたいと思っている。宜野座は狡噛の深い青い目を見つめつつ、自分からワイシャツを脱ぎ始める。それがまるで最初から決まっていたかのように、決まりごとを自分で処しているだけのように。だが、狡噛にとってそれはショックな出来事だった。隙間を埋めるようなセックスが嫌いなわけではない。ただ、そんなものに自分が関わるということを、狡噛は少し恐れているきらいがあった。狡噛は愛を知って生きてきた、いや、愛を疑わず生きてきた。それは宜野座とは全く違った生き方で、佐々山を失った時ですら、執行官に堕ちた時ですら、宜野座の愛を疑うことはなかった。それで無茶もしたし、彼には迷惑もかけただろう。だが狡噛は、それでもやはり自分は愛されていると思っていたのだ。だが宜野座は違った。幼い頃から潜在犯の息子として一人生きて来た彼にとって、狡噛の傲慢とも言える愛情は毒のようなものだった。ラジオを使った愛の告白が嫌だったわけじゃない。あれが彼の本心だと宜野座は断言出来る。もうすぐ夜が開ける/朝日が疲れたまぶたを閉じさせる時/もうすぐ俺の愛するお前の側に行くよ/お前に驚きの全てをやるために向かってるところだ/今すぐダーリン、お前の側へ行くからさ/星たちが降り落ちて来たら、俺がお前と一緒にいるから。きっと歌の通りに夜が明ける時狡噛は宜野座の隣にいるのだろう、いてくれるのだろう。だが、宜野座はワイシャツを脱ぎ、狡噛にまたがりながら、それを信じられないでいた。狡噛は戻ったというのに、いつかこの安寧が破られやしないかと、そう思ってしまったのだ。狡噛はそんな身の入らないセックスをしようとしている宜野座を見て、かわいそうに、と思った。それも傲慢な感想だったが、彼の心からの理解だったのは事実だ。狡噛はそんな可哀想な恋人にキスをしてやりながら歌をつぶやいた。俺ったら、もう随分と長いこと、自分の行くべき場所を待ち続けて来たよ/お前の愛が輝く陽の光の中で。お前は拒否するかもしれないが、理解出来ないというかもしれないが、それが事実なんだ。二人はキスをする。狡噛は優しいそれを 1124 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑧声の切り替え問一:三人称限定視点を素早く切り替えること。切り替え時に目印をつけること。サンシャイン・オブ・ラブ1 狡噛は移民向けのラジオを聴いていた。古いチューナーから漏れ出るそれは、大昔のサイケデリックロックのラブソングだった。もうすぐ夜が開ける/朝日が疲れたまぶたを閉じさせる時/もうすぐ俺の愛するお前の側に行くよ/お前に驚きの全てをやるために向かってるところだ/今すぐダーリン、お前の側へ行くからさ/星たちが降り落ちて来たら、俺がお前と一緒にいるから。狡噛はソファに沈み込みながらそれを口ずさむ。隣に座る宜野座は歌詞を分かっているのか、時折深いため息をつく。きっと浮かれている自分がおかしいのだろうと狡噛は思う。今夜は金曜の夜で、明日は休みだ。それが自分をおかしくさせるのだと狡噛は思う。明日は休みだ、いつまででも寝ていたっていい。どんなに酷いセックスをしたっていい。俺ったら、もう随分と長いこと、自分の行くべき場所を待ち続けて来たよ/お前の愛が輝く陽の光の中で。それは自分のことのように思えたし、そう感じるのは尊大である気もした。エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカー。イギリスのロック界のレジェンドたちの歌は、投げやりだが耳どころか心にも響く。 953 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑦視点(POV)追加問題:一人称で別の物語を書く。煙草の煙に消えるものは5私が死んだその部屋に、数人の男と一人の女が入って来た。私はこの部屋に突然入って来た銃を持つ、明らかに薬をやっている男に囚われ、殺された。彼らはその男を私が死んだ後に確保した。私はそれを残念に思ったが、それが彼らの限界だったのだろう。だが、長髪の男はまだ何かを考え込んでいるようだった。部屋の隅に立ち、私の血で汚れた部屋を見つめている。その時、彼の後ろについていた男が煙草に火をつけた。私はそれを鎮魂の祈りのようで歓迎したが、長髪の男はそうではなかったらしく、彼に煙草を止めるように言った。そして煙草の男は、携帯灰皿にまだ長い煙草をにじり消した。畳の上には割れた茶碗や、私がまだ手をつけていなかった食事が湯気を立てて転がっている。私はそれを残念に思ったが、私はもう死んでしまっているのだった。彼らは傍観者でしかない。それにあの犯人も人を殺したのだ、公安局によって執行されるだろう。 389 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑦視点(POV)問四:潜入型の作者煙草の煙に消えるものは4そのポニーテールの男、宜野座伸元が部屋の隅に立った時、彼は友人の狡噛慎也の方から煙草の匂いを感じた。それに宜野座は窮屈そうに抗議した。彼は優秀な狙撃手だったが、今回の事件、つまり立てこもり犯が被害者を射殺してしまった事件についてヘマをやらかしていた。そう、犯人を確保するために撃つための銃が、ジャムを起こしたのだ。だから宜野座は部屋のあちこちに飛び散る血を見、畳の上に転がった割れた茶碗を見、まだ湯気を立てる手付かずの料理を見つめて煙草を吸わないように狡噛に求めた。宜野座は元は執行官だったから、今も事件のかけらを探しているのだ。先に現場に入った須郷徹平や花城フレデリカがダンゴムシと呼ばれる鑑識ドローンを操作して事件をあらかた検分し終えてしまっても、それでも自分の嗅覚を信じていた。そして狡噛は煙草を携帯灰皿ににじり消した。彼はこんな時友人である宜野座に逆らわない方がいいと思っていた。それは暗黙のルールで、ヒエラルキーのようなものでもあった。 423 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑦視点(POV)問三:傍観の語り手煙草の煙に消えるものは3私が見たのは、狡噛の煙草に抗議する宜野座の姿だった。今回の事件は悲惨だったから、それも仕方ないのかもしれない。私は須郷と共にあらかた事件をダンゴムシを使い捜査を終えたが、宜野座がまだ何か猟犬の嗅覚に頼っていることは分かった。今回の事件は立てこもり犯が被害者を射殺し、それを須郷が確保したものだった。宜野座は狙撃手として隣のビルに待機していたが、彼が役に立つことはなかった。いや、役に立つ機会はなかった。血が飛び散る部屋には、茶碗が転がり、割れ、手付かずの料理はまだ畳の上で湯気を立てている。花城は宜野座と狡噛を見守った。すると狡噛は驚くほど早く煙草を携帯灰皿でにじり消した。宜野座はそれに納得したのか、また事件現場に潜る。私はそれを見て暗澹たる気持ちになった。彼はまだ猟犬であった時代が忘れられていないのだと、そう思ったのだ。 363 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑦視点(POV)問二:遠隔型の語り手煙草の煙に消えるものは2その背の高い男たちが三人、そしてこれも長身の女が一人部屋に入ると、すぐさま立てこもり事件の捜査が始まった。一番歳の若い男と、その上司である女は事件現場を真っ先に検分した。しかしそれほどの収穫はなかった。あちこちに散らばる茶碗は割れ、手付かずの料理はまだ畳の上で湯気を立てていた。それを見ていたポニーテールの男が、煙草を咥えた男に窮屈そうに抗議した。狡噛、やめろと。今回の事件の被害者を救えなかったことを、狙撃手であるポニーテールの男は後悔しているようだった。それに煙草を咥えた男は携帯灰皿で火を消す。彼らは友人同士だったが、こういう時はヒエラルキーが存在した。いわく、不機嫌な友人には逆らわないということだ。 304 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑦視点(POV)問一:二つの声①単独のPOV(三人称限定視点)②別の関係者一人のPOV(三人称限定視点)煙草の煙に消えるものは1① 狡噛は宜野座が部屋の隅で立ち止まったのを良いことに、煙草に火をつけた。ずっとヤニ切れだったから、とにかく吸いたくてたまらなかったのだ。ここは事件現場だが、たったそれだけのことで証拠は失われないだろう。花城も須郷も、事件現場を検分し終わった。それにもうこの部屋の匂いは覚えていた。違和感はなかった。しかし当然ながら、宜野座はそれに抗議した。狡噛、やめろと、どこか窮屈そうに。今回の事件は立てこもり犯が被害者を射殺して確保されたものだった。その証拠に、部屋のあちこちには血が飛び散っている。茶碗は転がり、割れ、手付かずの料理はまだ畳の上で湯気を立てている。狡噛はそれにすぐに煙草を携帯灰皿に消した。こういう時、この友人には逆らわない方がいいことを本能的に知っていたからだ。 700 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑥老女現在時制と過去時制、一人称と三人称。母なる国のひまわり① 好きでもない編み物をするようになったのは、ねじ曲がった指の訓練をするためだった。医者がそう勧めたのだ。手術をどれだけしても、これ以上良くはならないからと。 私は少女の頃この日本にやって来た。紛争地である母国を離れて、父母と幸せに暮らすために。日本での暮らしはサイコパスに気を付ければ天国だった。だが目を閉じた私がまぶたの裏に浮かべるのは、幼い自分が一面のひまわり畑で走り回っている姿だった。夏の匂い、母の作ってくれたレモネードの味、父が建てたサンルームでの読書。私は時折それを思い出し、この清潔な日本での暮らしを与えてくれた父と母の元に逝くことを望んだ。私はそれほどにも長く、幸せにここ出島で生きてしまったから。 647 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題⑤簡潔性形容詞も副詞も使わずに描写すること。彼の汗を拭う 狡噛の額から汗が垂れる。それはベッドサイドのライトに光り、俺の目をくらませる。俺はそれが悔しくて彼の腹筋に触る。彼はやめろといったふうに俺の手を振り払う。俺はそれに抵抗し、彼の筋肉を触る。肩や背中、腰、太もも、それから惚れている顔のラインなどを。狡噛はそれを笑わない。俺のやり方を笑わない。セックスの仕方を笑わない。俺は身体を反転させ、彼の上に乗る。狡噛が笑う。彼は俺がどうやって楽しませるのか期待しているようだった。俺はそうセックスが上手くないから、そんなに期待されても困るのだが。 俺は一度ペニスを引き抜きしごく。コンドームが音を立てる。俺はそれが面白くて手首をストロークさせる。狡噛が歯を噛み締める。どうだ、俺も出来るだろう、俺はそう笑って、彼のペニスをまた挿入させる。狡噛は繰り返し息を吐く。俺のセックスが気に入らないのか、それともその逆なのか。俺は彼の額に浮かぶ汗を拭った。それを掬って飲むと、いつもよりずっと美味かった。彼が興奮しているせいだとしたら俺は喜ぶだろうし、彼もそうであるだろう。俺はそんなことを考え、またキスをした。 472 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題④問2 構成上の反復青い目の殺人 出島で連続して青い目の男女が瞳を切りつけられる事件が起こった。それは今のところ解決していない。被害者の共通事項を探しても、青い目以外には何もないのだ。年齢も、性別も、宗教も、日本にやってきた理由や出島にやって来た日本人の理由も。この奇妙な事件は連続して起こり、解決はまだ見えない。公安局だけでは手に余ると思ったのか、厚生省は俺たちにも協力を申し出て来た。移民が犯人とみたのかもしれない。ならば俺たちの方が良く知っているし、公安局には不利にはたらくだろう。しかし、俺たちの手に事件が渡って一週間経っても、犯人が見つかることはなかった。その間も青い目の人々は切り裂かれ続け、その美しい目を失った。幸い今は再正技術が発達しているから、彼らは新しい目元の皮膚も、新しい目も得ることが出来た。だが、切り裂かれた恐怖からは一生逃れられないのだ。 869 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題④重ねて重ねて重ねまくる問1 語句の反復使用瞳と独白 狡噛の目は美しい、しかしどう美しいのかについて語る術を俺は持たない。彼は単純に美しい目をしていて、それはDNA上の問題でしかない気がした。例えば猛禽類の瞳の色、狼の瞳の色、そんな狩りをする動物の色と同じだと例えでもすれば伝わるのかもしれないが、彼の目が持つ美しさについて俺はそんな陳腐な言葉を使いたくなかった。狡噛の目は美しい、それでいいのではないか、彼を愛しているから理由が欲しいのかもしれないが、ただ美しい、それだけでいいではないか。俺はそう思ってその美しい瞳を閉じた狡噛のまぶたを撫でる。そのふれた指が彼の瞳の美しさを自分に伝えている気がした。狡噛は笑うかも知れない。けれど彼の目の美しさは、誰にも奪えないものなのだ。と、そこまで考えて、セクシーな女が彼の目を宝石に喩えるなら許せるかもしれない、ふと俺はそう思った。 362 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題③ 追加問題問2書いてみた長い文を変則的な節や言葉遣いを用いてみる。埋葬されたスプーンその2 宜野座がスプーンを落とすのはそう珍しいことでもなかったが、そう握力が弱いわけでもなかったので、狡噛が病室にやってきても驚きはしても動揺はしないと思っていたけれど、いざ顔を見たらステンレスのスプーンを落としてしまっていたーー狡噛は煙草を吸いながらこう言った、この部屋少し暑すぎやしないかと、ただそれだけのことを宜野座に伝えたいわけでもなかろうに、そんなありきたりなことを言って場を繋いだーー天気の話題よりマシか、そう宜野座は思いつつ、そっちの方がマシな場合もあるだろうと思ったーー狡噛は訳の分からない引用をすることが多々あり、宜野座はその度に彼が好む哲学書から古い漫画までデバイスで調べねばならなかったーー俺はドラえもんじゃないんだぜ、仕事の最中に言われたあの言葉は屈辱だったというか、お前がそんなに役に立ったことはないだろうと宜野座は思わずにはいられなかったーー確かに狡噛は有能な捜査官だったが、あの青い猫型ロボットのようには自分を慈しんではくれなかった、じゃあキスをしよう、そう宜野座は思い、狡噛の腕を引っ張った、狡噛は何も抵抗しなかった、俺が何も馬鹿なことをやらかさないことを知っているのだろうと宜野座は思い、苛立ったがそれでも酒や煙草の味がするキスを楽しんだ、途中で看護師や医者がやってきたが無視してキスをしたーーキスを止めたのは花城がやってきて、迷惑をかけないでちょうだいと言われた時だったーーこれくらい位じゃないか、そう狡噛は言い、また煙草をつけ、任務で負傷しベッドに横たわる宜野座に覆いかぶさってキスをした、花城はもう何も言わなかった、恋人が危険な状態にあったのだ、仕方がないと思ったのだろう、けれど宜野座は彼女を少しかわいそうに思って、そうして彼女が話し出すであろう新しい捜査情報に耳を傾け始めたのだった。 761 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題③追加問題問1 15字前後で200〜300文字を書く煙草と飴 狡噛は煙草を吸っていた。咎める者は誰もいない。ここは出島のマーケットだからだ。シーシャを嗜む者もいる。そんな甘ったるい空気の中で宜野座はため息をついた。さっきから聞き込みはうまく行っていない。いつもなら調査は順調なはずなのに。そんな時、狡噛は若い娘からキャンディーを買った。簡単な話だ。どっさりと飴を買って情報を得るなんて。しかし狡噛は隠れ蓑のキャンディーを捨てることもなく、煙草の代わりに飴を舐めた。そして宜野座の腕を引っ張りキスをする。宜野座は観念する。仕事のためなら仕方がないと。それから、いささか役得だなと思いながら。 264 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題③問2700文字に達するまで一文で執筆する埋葬されたスプーン 宜野座はステンレスのスプーンを落としたーーその時狡噛は煙草を吸っていたーーあろうことか病室でーーそれも高級なそこで狡噛は自分がリラックスするために煙草を吸っていたーーしかし宜野座は狡噛を咎めはしなかったーーもとより宜野座が咎めることなどこの世にはないのだったーー宜野座はそこで狡噛の腕を引っ張り久しぶりに彼にキスをしたーー辛い煙草の味だったーーそう品質も良くないのに高いだけの煙草の味だったーー宜野座はその味に安堵したーーそれが自分が脇腹を撃たれて昏睡状態になる前に感じた味と同じものだったからだーー「やめるか?」ーー狡噛はそう尋ねたーー宜野座はどう答えていいいか分からなかったーーそもそも何をやめるかを彼は教えてもらっていないかったーー突然のキスかそれとも行動課の仕事かーー「いいや」ーー宜野座はそう言ったーー自分では何を言っているのか分からなかったがそう答えねばならない気がしたーー狡噛と宜野座はまたキスをしたーー口の中を絡めとるようにそうすると酒の味もしたーーもちろん血の味もーーまた馬鹿をやったのかと宜野座は思ったーー狡噛は無茶をする男だったーー執行官時代などは顕著だが仕事のために自分の命を落としても構わないと思うところがあったーー自分はその度に彼を叱ったが狡噛が改善することはなかったーーそういえばどうしてスプーンを落としたのだろうと宜野座は思ったーー狡噛は自分を眺めに来たのだったーー恋人の様子を見に来たのだったーー狡噛は仕事を切り上げてきたのだろうと宜野座は思ったーー癖のある黒髪青い目筋肉のついた体それらをすベて愛おしく思ったーーこの男は訪問に驚かれても動じないそんな男だったーーそしてようやく宜野座は、この時自分が狡噛を、心の底から、赤子が泣くように、埋葬された男を愛するように、そんな不確かな状況で愛していたのだと知った。 773 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題③問115文字程度の文章で200〜300文字書く恋人の鉢植え ギノは鉢植えに水をやっていた。俺はその名前を知らない。だが、彼は丁寧に世話をしていた。聞けば幼い頃からの趣味だという。彼は資格も持っているそうだ。今は夕暮れ時だ。俺はそろそろ食事がしたかった。けれど、彼が水をやり終えるまで待たねばならない。それほどまでに植物はギノを癒していた。 「お前が先に行ってもいいんだぞ」 ギノが言う。そんな選択肢俺にはないというのに。だから俺は煙草を吸いながら待つ。まるで彼の部屋にマーキングするように。 217 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題②句読点を使わないで文章を書く…難しい…。ベッドシーツの上で 本が落ちベッドに沈み込むとギノは何もかもが終わったようなこれから始まるような顔をしたので俺はなんなら自分のペースで始めてやると彼の長い髪を掴んでベッドに押し倒しばたつく彼の唇に自分のそれを重ねたもののギノはすぐに寝るのは嫌だったのかたいそう暴れて俺の腹を蹴り俺がそれに反応するととても楽しそうに笑って本が散らばるベッドの上で俺の腰に足を絡めゆっくりと腰を揺らし始めあぁこうやって始めるつもりなのだと思った俺は彼が笑っているのを確認してきつく抱きしめあご裏をじゅぶじゅぶとしゃぶり始めたが彼はそれが気に入らなかったのか切長の青い目で俺の頬をなぞり俺の脇腹を足で突き俺を押し倒そうとしたもののそんなのにやられる男でも俺はなかったから俺は何度も何度もキスをして彼が俺に身体を委ねるのを待ちつつことを前にベッドシーツの上でじっくりと進めていった。 370 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題①問21からつながっているなんちゃってハイジャックものです。女たちの顔 不幸にも飛行機に乗り合わせた人々は震えていた。ハイジャックを試みた少年兵は殺したが、それによって俺たちも同様の力を持つ人間と見られたのだ。老婦人は夫にしがみつき、涙を流していた。唇は震え、口紅は歯について剥がれていた。涙でぐしゃぐしゃになった顔はファンデーションが剥げていた。飛行機に乗り合わせていた女たちはほとんどがそんなふうだった。男たちは尊厳を保つため震えながらも席を立たなかったが、女たちは、添乗員でさえ突然の襲撃とその後の死に怯えていた。 「これで犯人は全部?」 「いいや、あと一人パイロットを人質に取ったやつがいる」 ギノが言う。俺はそれを聞きながら、さぁ、どうやって殺す?と考えた。そんな俺の目に、婦人たちは震えていた。しかし自分たちを助けてくれたのだから、失敬だと思っているのか涙を浮かべながらもこちらを見ていたが。いや、あんたたちの最初の感情の方が正しいんだ、俺はそう思う。俺の手は血に濡れている。今回撃ったのがギノでも。あんたたちの本能は正しいんだ。俺はそう思って、コックピットに向かった。最後の敵がいるコックピットに。 472 時緒🍴自家通販実施中TRAINING練習問題①問1血に沈んだイヤリング 花城がベレッタを取り出す。しかしそれはギノがジャケットからそのまま標的を撃ったのと同時だった。男が倒れる。フルフェイスのヘルメットが割れて、幼い少年の死んだ目があらわになった。花城はその少年が動かないことを確認して、自分そのものといったイヤリングを取り返した。だが、それは血まみれで、つけられたものではなかった。 「花城、俺が」 銃撃で焼けたスーツを脱ぎながらギノが言った。花城は素直にイヤリングを差し出す。するとギノは上等に仕立てたスーツでそのイヤリングを拭き、上司に返す。どうせ捨ててしまうから、汚れてもいいというところなのだろう。 「ありがとう、つけていないと落ち着かなくて」 花城が言う。ひし形の赤い宝石がはめ込まれたイヤリングがまた、彼女の耳元を飾る。俺はそれを見て、俺たちを攻撃しようとした少年兵の血の色だ、と思った。彼女はそれを耳に飾っているのだと。きらきらと、光を受けて輝くそれを飾っているのだと。 410 1