光の道 狡噛と諫早の祭りに行ったのは、彼の提案した通り七月末のことだった。
とはいえ俺たちは二人きりだけでなく、行動課全員と、協力を申し出てきた長崎の公安局の刑事課監視官、執行官たちがそこにいた。今夜、ここで違法薬物の大規模な取り引きが行われるとのタレコミがあり、その確実性から俺たちは祭りの他はさびれた街にやって来ていたのだった。公安局は当初情報に及び腰だったが、俺たちが出るとなると出動しないわけにはいかなかったのだろう。祭りが仕事で潰れたことは悔しかったが、それでも夕暮れ時に太い川に浮かぶ灯明と、橋や川辺を飾る明かりが美しく、道ゆく人々はその灯りと終わってしまった太陽に薄ぼんやりと照らされていて俺は見惚れてしまった。そして俺はそれに、古い時代の詩人の短歌を思い出す。
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