凪砂さんと茨くん 2【背伸び】
雲ひとつない、秋の晴れ渡った空。
まさに秋晴れ、そして洗濯日和といった今日。
ある高層マンションの一部屋にも、燦々と降り注ぐおひさま。
窓辺はとてもあたたかく、そこに座り込み愛用のブランケットを羽織って日向ぼっこをする、一人の青年がいた。
「凪砂〜」
日差しが心地良く、うとうとと微睡んでいると部屋の奥から、その青年──凪砂を呼ぶ声が聞こえ深くに沈みかけていた意識がゆっくりと戻りだす。
凪砂は座ったまま、ぱたぱたとスリッパを擦りながら声の主が近付いてくる音を聞いていた。
「凪砂、寝てんの?なぎ……起きてんじゃん、返事くらいしてよ」
ひょこっと横から顔を覗き込んできたのは、彼と共に暮らす少年──茨。
特徴的な暗紅の髪が陽に照らされ、鮮やかな赤にもなるその色を、ゆっくり瞬きしつつ見つめた。
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