富豪×ディーラー 2────────
スロットに消えていく何枚ものコイン、運命を決めるルーレットを回るディーラーの投げた球、積み上げられるチップ、客達の歓声や悔しがる呻き。
様々な音が入り混じるこのカジノにて、それらをかき分け今日はいっそう響き渡る声があった。
「メルメル〜!しっかりやってっかァ〜!?今日は大・勝・利!の燐音くんが遊びに来てやったぜェ!」
上等そうなファーのついた黒のジャケットにゴールドのアクセサリーをいくつも身につけ、その容姿から嫌でも目をひく上機嫌な赤髪の男は。
一人のディーラーが立つルーレット台のテーブルにどかっとついた。
「天城…。こちらはまだ業務中なので、騒ぎ立てて邪魔をしないでください」
ちょうどゲームを終わらせ、チップを回収していたそのディーラーは、男を見るなり心底迷惑そうに顔を顰めた。
3319