神i奈i川と埼i玉/47 細くて長くて器用な指。それはまさしく彼という存在を表しているようだった。
髪をすかれる心地よさに目を細める。指先がたまに耳に触れてこそばゆさを感じる。埼玉はゆっくりと瞬きをし、前を見た。少し眠そうな、ぼんやりとした印象を受ける青年が映っている。あまり鏡は見ないが見慣れた親しみを覚えるのは、双子の兄のせいだろう。
「柔らかい髪だね」
「そう?」
神奈川は顔を伏せていたからいまいち表情は分からなかったけれど、小さく笑ったのが空気でわかった。響きの良い低音で、彼は答える。
「うん、東京と同じだ」
神奈川は埼玉の頭から手を離した。ワックスの蓋を開け、中のものを手のひらに広げる。
鏡に映るその姿を仏頂面で睨みながら、埼玉は重々しく口を開いた。
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