能京高校/灼カバ「ずっと外食だって聞くからさ」
台所からは鍋が煮える音と共に、王城の声が聞こえてくる。
「栄養もそうだけど、お財布も厳しいだろうし。たまにはね」
「あんまり甘やかすなよ」
井浦はテーブルの上に開いたラップトップから目を離しもせず答えた。王城は仕上げに塩と胡椒を振ると、身を乗り出し、半眼で彼を見やった。
「なら慶はなんでここにいるのさ」
「は? お前の飯食うために決まってんだろ」
「…………」
当然のように答える幼馴染に言葉もないまま、王城は火を止めた。大鍋をそのままテーブルまで持ってゆく。身振りで井浦の荷物をどかさせながら、ふと思い立って尋ねる。
「あんまり聞かなかったけどさ、慶ってご飯どうしてたの?」
自炊をしているところは見たことがないし、かといって頻繁に外食をしている様子もない。たまに王城の手 料理を食べにくることはあるが、それに頼りきりというわけでもない。
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