ニアール家/アークナイツ 最後の使用人に暇を出して数ヶ月が経った。
勤めに出ているムリナールは、昼や夜の食事は外で済ますことが多い。マリアも外に働きに出るようになってから同様だ。
ただし、朝食だけは二人とも家で取る。
手先の器用な姪は料理に抵抗がないようだった。よって、食事の準備は彼女の担当となった。
基本的に、パンとスープとシンプルなものだ。ムリナールは自他に厳しいが、他人を用意したものにけちをつける性格ではない。もっとも、マリアの料理は上等で、少なくとも味については文句のつけようがなかった。ムリナールは、食後の紅茶を飲みながら新聞に目を通す。昔なら行儀が悪いと父に叱られたものだが、もう体面を気にする相手もいない。
議員の汚職の記事を読み終え、経済面を眺める。どうもこういったものはあまり頭に入ってこない。
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