眠れぬ夜も悪くないとぅるっとぅ。
トゥニャの持つ携帯電話が、そんなメッセージ着信の音を立てた。
「ん?」
トゥニャはゲームをポーズ画面に切り替えると、椅子を軋ませながら携帯電話に手を伸ばす。
音に機敏なトゥニャが通知音を入れたままにしている相手というのは、そう多くはない。研究所からの緊急マークの付いたメッセージか、余程仲の良いヌビアの子か、のどちらかだ。トゥニャが携帯電話を取ると、そこには後者を示す名前が表示されていた。
「【記憶】男」
トゥニャは表示された『エルベ』の代わりに、その男が持つ物の名前を呟く。ボタンを一つ押して、メッセージ画面を開いた。
『トゥニャ、今起きてるか?』
トゥニャはそのメッセージを読んでから、時計を見上げた。指し示している時刻は既に2時を回っている。なるほど、ヌビアの子は、普通は夜型になどなりようがない。研究員身分の基本出勤時間が9時から17時なのだから、当たり前だ。とはいえ、ネットゲームの世界に身を投げることを趣味としているトゥニャにとっては、今はまだまだゴールデンタイムだ。
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