2y8m8dヌビア学研究所、居住区。集合住宅の三階。
ある一室の前で、私は待つ。
彼女の帰りを、ただひたすら待つ。
「…………」
じっと動かずに、静かに待つ。
待つことは、苦手ではない。
体力なら無尽蔵にあるし、忍耐力も人より秀でていると思う。
まして、待ち人が彼女であるなら、2日や3日立ち続けるのだって苦ではないと思う。
「………………」
だから、私は待った。
後ろ手にした小箱を少しだけ強く握りしめて、ひたすら、彼女の帰りを待った。
その時、長い廊下に足音が響いた。
「誰…?」
訝しむような、小さな声。でも、私にはその声の持ち主がすぐに分かった。待ち人そのものだった。
可愛らしくも落ち着きのあるその声の主は、私の姿がよく見えていないらしい。誰だかわからない人間が、自分の部屋の前にいる。きっと、少し怖いのだろう。
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