荼毘に付さずに笑ってくれよ あの目が好きだった。4月、クラス替えでそわそわしているオレを見透かすように、振り向きざまに笑んだ瞳。博愛を青く染め上げたような眼差しに、一瞬で恋に落ちた。
王子一彰。オレの前の席に座る、オレの好きな人。
授業が楽しいと思ったのは高校に入って初めてだった。太陽の傾きに応じて濃さを変える髪、垣間見える白い首、学ランで角張った肩に、分厚い布越しでも分かる整った背。それを見ているだけであっという間に1時間が過ぎて、1日が終わる。
初めて「ボーダーに入ればよかった」と思った。ボーダーの防衛任務のせいで王子が見られないときがあるのが、辛くて、苦しくて、憎たらしかった。だけど受験を控えた身で、今更ボーダーに入るのもむずかしい。やむなくオレは隣のクラスに遊びに行っては、ボーダーに入ってる友人に王子の話をせがんだものだった。
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