「瞳を見てみたい」と言われる度に、彼は少し安堵する。
それは隠せているという証左だからだ。
シャルルは、過去の経験以来進んで瞼を開かない。
その理由は見たくないものを見すぎてしまったから、ではなく。彼自身の苦悩ではあるが、他者に言及されたのがきっかけだった。
───────────
中学時代、シャルルは文学部に入っていた。
といっても文学部とは名ばかりで、実質はゲーム部のようなものだった。所属部員たちは部室にあるトランプや囲碁やらテーブルトークプレイングゲームやらにどハマリしており、文字に触れるのが珍しいほどだった。
だからだろうか。普段奇異の目やらじっとりとした視線を向けられる彼は、視線が自分ではなくゲームに向いているこの場に居心地の良さを感じていた。幽霊のごとく窓際に座って本を読んでいても、誰も口を出さない。たまに人数不足の勧誘を受けたが、それも悪くないなと思っていた。
2880