【透魔編】竜の血を飲んだ眷属ベスが人外になる話或るストラテジストの手記
私はこの日、生まれて初めて神という存在を信じ、その導きとやらに感謝し、首を垂れた。
無限渓谷での決戦で、カムイ王女殿下に敗れ、行方知れずとなっていた軍師殿の御身が見つかった。
そのうえ一命を取り留めている状態にあると、報告を受けた途端、私の両の目からは堰を切ったように涙が溢れ出した。
神は我々のことを見棄てずにいてくださったのだろう。
私は馬を走らせ、軍師殿のもとへと向かった。
軍師殿は供をするダークマージに寄りかかり、俯いたまま天幕の隅に座られていた。
ひと月も渓谷で倒れ伏せていたのだから、御身の状態はさぞかしひどいだろうと確認したが、どういうわけか傷も汚れの一つさえもない。
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