麝香豌豆/アイ光♂ カヌ・エとの会合も終わり、皇都へと帰ってきた頃にはすっかり夜も更けて人も[[rb:疎 > まばら]]だった。もみの木や外壁に取り付けられた電飾と街灯が、どこか暖かく暗がりを照らす街中を眺めながら邸へ帰れば、もはや家族といって相違ない老執事と老猫がアイメリクを出迎えた。
足元へ近寄ったかと思えば、グリーブとサバトンから漂う冷気にそろりと身を翻す老猫に苦笑しつつ、コートと緋色の衣が入れられた包みを老執事へと渡す。そのまま武具を保管している部屋へ入り、家宝の剣と武具を取り払い、それぞれを棚の所定の位置へと戻した。普段であれば使用人に任せているのだが、彼はとうに仕事を終え帰路についている。かといって住み込みで仕えているとはいえ、老いさらばえて久しい執事に冷たく重い武具を持たせるのは少々酷と言えよう。
2968