黎明を告げる言の葉 ふと目が覚めた。
心身ともに疲弊していたはずなのに意識が徐々に浮上していく。
ギルドが手配してくれた宿で床についてから、まだ数時間しか経っていない。ホーリー・クレイドルの効果か気怠さはなかったが、下手な時間に目覚めたせいで二度寝もできない。
上着だけ羽織って宿の軋む外付け階段をなるべくゆっくりと降りる。家々の屋根を一望できる高台の宿だった。紫がかる空は薄暗く、冷やかな空気と静寂さが心地いい。
「キースくん」
階段の上から声が掛かる。見上げれば、朝冷えしたのか鼻先と頬を赤くしたマニングが立っていた。カーディガンに腕を通しながら階段を軽やかに降りる。
「おはよう、ございます。キースくん、早起きですね」
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