リビング・ウィルファウストは食事が出来ない。
魔法使いの最期は特別に人間と変わらなかった。
病に冒されるだけの人と違って、その魔力が尽きる事も死と捉えるなら人間よりももっと死へのリスクは高い。
ファウストは食道を病に侵されていた。
魔力を持ってしても日に日にファウストの身体を蝕む病は彼から生命力としての魔力をも失う。
少しでも病を和らげられる様にと最近は彼を愛する精霊が住まう嵐の谷で過ごしていた。
たまにフィガロが訪れてもかつての様にそれを拒む事もせずただ素直に治療を受け入れている。
死期を悟れる程には魔力の強いファウストはそれを十分にわかっていたのだろう。
フィガロを拒まない理由がそこにはあった。
そして治療と言ってもファウストに施せる治療はもう実は無いに等しい。
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