頭上の空をつばめが切った。淀んだ雲のその下で、つばめは八の字を二度描いてまた上へと舞い上がる。
滑空。その字面に見劣りしないほど、滑るように美しく飛ぶ鳥だと、首切迅雷は頭の上を見つめながら思う。これが晴れていたなら更に気持ちのいい光景だったろうに──。
「……こりゃあ絶対降るな」
風が僅かに吹いた。
頭上の空には分厚い雨雲。水分を抱えて淀んで垂れこみ、気分まで重たくしてしまうような曇天がすぐそこにある。まるで油粘土を塗って固めたような、そういう嫌な天気だった。道理でつばめが低く飛んでいるはずだ。きっと雨天を察知した羽虫たちはさっさと草むらに身を沈めてしまったのだろう。隠れる方も集める方も大変だなぁ……と、首切は他人事の食物連鎖にすん、と鼻を鳴らして笑った。
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