「面倒な男【ルロー】」ボツ文章 カヤが出産した。分娩中は世界ではじめてと言ってよいほど先進的な技術が導入されたらしいが、ルフィに詳しいことはわからない。ただ、とにかく新しい仲間が麦わらの一味に加わった。赤ん坊の名前は、はじめて我が子を腕に抱いたカヤがその瞬間に付け、ウソップもそれがよいと真っ先に頷いたという。よい名前だ、とルフィも思う。
「トラ男はローだな」
と、ルフィはチーズケーキを食べながら言った。目の前のローは、海のいきものパフェにスプーンを突っ込んだまま目を丸くしている。ルフィは怪訝にその顔を覗き込んだが、ローはそのままクリームをぱくりと食べて言う。
「お前……おれの名前、知ってたのか」
「知ってるに決まってんだろ!」
シッケーな、とルフィはフォークの先をピッとローに向けたが、彼は、まあ短いしな、と勝手に納得したような顔で白くまクッキーの耳を齧った。確かに、ルフィは人やものの名前に疎いし、覚える気もあまりないのだが、恋人の名前を覚えない男だと思われるのは心外だった。
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