風にさらわれたのは。「わ!」
強風で、干してあったシーツが空へ舞い上がる。しなやかな布地に頰を張られたミチルはよろめいて尻餅をついた。
「シーツが!」
朝からいい天気だったので外に干していたが、風が強くなってきたので様子を見にきてみたら案の定だ。ピンチを弾き飛ばして風に誘われるように空へ飛んだそれはあっという間に小さくなっていく。
と。
「ブラッド!」
ミチルの斜め後ろ、ネロが短く叫んだ。え、と視線を辿った先で、箒から片手を放したブラッドリーがシーツを掴みとめた。
ネロの言葉に反射的に動いたらしい彼は、掴み止めたそれを広げて大きく首を傾げた。
風にバタバタと激しく揺れていたそれが、静かに動きを止める。まるでシーツの周りだけ無風にでもなったかのように。
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