在りし日の記憶「よおネロ、息災にしてるかよ」
「ぼす!」
「その言い方やめねえか」
声をかけられ、小さなネロは嬉しそうにこちらが潜む木陰まで駆けてくる。
足に勢いよく抱き着いた身体を抱き上げ、覗き込んでブラッドリーは軽く眉をひそめた。
心から安堵した、という表情。不安が色濃く滲んだそれが、妙に引っかかった。
「何かあったか?」
「う……えと」
ブラッドリーにしがみついたネロは、しばらく迷うように眉を下げ口をもぞもぞとさせていたが、やがて、ファーザーが変だ、と呟いた。
「神父が? バルドスが変なのか」
その名に、ネロがくしゃりと顔を歪めた。泣きそうに潤んだ大きな目で必死にブラッドリーを見上げ、バルドス様じゃないのに、と訴えた。
3082