夏の盛りの逃避行「ん……」
軽い違和感とともに目が覚める。
肌に触れるシーツの感触が、馴染みのないものだと気づくより前に、汗ばんだ肌の匂いに安心した。
まだ焦点が合わない意識のまま、誘われるように目の前の肌にちゅく、と吸い付けば、こら、今日はやべえ、と上からあまりやばくなさそうな笑い声が降って来た。
「どうせならついててもいい時につけてくれよ。流石に今日はマネージャーに泣かれちまう」
「んぅ……」
ふしくれだった指が柔らかく唇を肌から引き剥がして、感触を楽しむように下唇をなぞってくる。
ネロは覚醒しかけた意識の中で、ちゅく、とその指先を口内へ迎え入れた。
ちゅむ、と舌を這わせて夢中になってしゃぶっていると、あーくそ、と頭上で漏れた低い声に艶が乗った。
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