初対面が20過ぎのラウグエ「お前が俺の弟か」
そう、声をかけられたとき、僕は熱々のラテを乗せた盆を掲げていた。
相手は身なりの良い紳士だったが、年は僕とそう、変わらないかもしれない。そこだけ明るい色に染められた前髪がふんわりと上げられて、目元の黒い黒子を際立たせていた。
が、いずれにしても奨学金まで借りてやっと大学を出たのに就職先にあぶれてバイトを掛け持ちして借金の返済を工面している僕とは、住む世界がちがうことにはかわりない。
「勘違いかと」
「ところがそうでも無いんだ」
相手は懐から一枚の紙を取り出す。名刺だった。今時、高価な紙をこんな情報量の少ない印刷物のために使う人がいるなんて。
「ぐ、える・じぇたーく?」
「ジェターク・ヘビー・マシーナリーのCEOって言えば分かるかな」
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