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    gw_morina

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    #ラウグエ
    laugue

    ラウグエワンライワンドロ(10/12) はじめから……ですか? 
     あ、いや、嫌なわけじゃ無いんです。ただ、ちょっと面倒だなって。
     だって、僕にとってのはじまり、ってすごく遡りますよ。あの時からになっちゃうから。そう。母さんにいきなりバイバイって言われて。読みかけの本と旅行用のチェスのセットだけもってあの家の、入り口で兄さんと会ったとき。家は思ったより広くなかったけど、彼は想像よりずっと大きかった。ああ、これから苛められるんだろうな、なんて思ってました。それが──え?やっぱりいい??
     じゃあ、逆にどこから話せば良いんだろう。まあ、僕がすべてを知ったときからが自然ですよね。

     シャディクが父さんとシャディクが共謀して総統の暗殺を目的としてプラント・クエタのテロに関わったこと、その過程の中で兄さんが父さんを殺したことを告発して、兄さんがそれを認める発言をしたとき、僕は母艦の中で確かにそれを聞いていました。

     オープン・チャンネルだったけど、あれを聞いた人が他にいたのか、僕には分かりません。皆何事もなかったようにシャディクを捕らえて兄を助けてたから、聞いてなかったのかな? 聞いてても、あのときはきっと、それどころじゃ無かったと思うけど。後で話すように、結局とるに足らない問題として扱われたんでしょうけど。

     なんでって?

     あは。……だって、父は死んでいた方が都合が良かったから。
     対して兄は、潔癖である必要があったから。

     今でも時々思うんです。あのゴタゴタの中で父が生きていたら、どんな風に行動してたかなって。多分怒ったり、裏でいろいろ暗躍したり、めまぐるしく表情を変えて、大声を出して、すっごく生き生きとしていたでしょうね。この機に乗じて総裁になろうとしたり、宇宙議会連合と手を組もうとしたりとかもしたかも。目に浮かぶようじゃ無いですか? なにか悪事をおもいついたときの、笑い方。部下や僕に檄を飛ばすときの口調。最悪ですよね。まあ、低劣な人なので。でも、自分でもびっくりしたんですけど、僕はあの軽蔑すべき人が、がそこまで嫌いじゃ無かったみたいです。物心がつくのが遅くて、人生の大部分をあの家で過ごしたようなものだからなのか、どっちかっていうと、皆の反応の方が無理だったな。兄を含めて、操られている駒みたいに見えて。

     今の兄のこと、『大人になった』とかいう人も居るんでしょうけど、僕には兄が兄を兄たらしめていた物、すべてを失ってしまったようにしか見えなかった。

     だから"準備"をしながらなんどか、父さんが生きてたら良かったのにって思いました。絶対ろくな事しなかっただろうって、分かってるのに。それでも、今のこの状態の僕らを助けてくれる気がしたんです。なんでだろう。

     ファラクトと一緒にシュバルゼッテも、オーバーライドされて。それをみて、やっぱり僕にモビルスーツを操る才能は無いんだな、って思いました。ガンダムに乗ってたときの高揚感が薄れたせいかもしれないけど。思いのままに操っていると思っていたシュバルゼッテは、あの水星女にオーバーライドされたときの方が、ずっと生き生き動いて、兄を守っていたんです。

     全部が終わって、皆がホッとしたようにその場に倒れ込んで、笑顔で。兄も帰ってきました。フェルシーが、泣きながら抱きついているのを挟んで、僕に向かって笑いかけて。僕はさっきのことを謝りました。何について謝ってるか?それは自分でも分からなかったけど。兄は良いんだよ、俺も悪かったと言ってくれて。

     その時から今に至るまでずっと、考えています。
     これで、本当に良かったのかなって。

     それで、クイーンハーバーの事件が起きる直前に見た、テレビ越しの兄の姿を思い出したんです。
     地球の暫定政府との会談の直前になって、兄はなぜか、建物の法ではなく、人混みの中をまっすぐに進んでいきました。並んだ警備員の隙間から。その動作はあまりにも自然で、あまりにも何事も無かったので、警備はそれを許すように身体をずらすしてしまった。
    「にいさ──」
     テレビに向かって呼びかけた僕の声が届いた訳も無いのに、兄は踏み出した足を止めると半身だけこちらに振り返りました。中継用カメラに兄と、その後ろのデモ隊の人間達が目一杯にうつって。その目に浮かぶ、憎悪憎悪憎悪。それを背に受けながら、兄は、にこりと笑いました。ふわりと、花のように。形の良い唇が上品なカーブを描くように。
     その笑顔をみながら、ゆっくりと理解しました。
     これは、ダメだって。

     だから今日ここに来るとき、胸のそこから湧き上がってきたのは、あの日シュバルゼッテに乗ったときの感触です。あの、全身が焼け付くような熱さと、焦がれる気持ち。
     そう、兄さんを、あの忌まわしい会社から切り離すには、これしかない、僕しか、いないんだって。

     お集まりの皆さん、どうか公正な判断と、捜査をお願いします。証拠は別途に添付したとおりです。
     宗教は持ちませんが、必要でしたら慣例にのっとって、その本に手を当てましょう。
     これでいいですか? では、良く聞いてください。
     
     僕はここに、兄および不特定多数の人間に対し殺意をもって、ガンダムにて攻撃したことを自白します。加えて、父ヴィム・ジェタークがシャディク・ゼネリと共謀して総統暗殺を試みていた疑いに関する、正式な捜査の要求も。
     そして最後に、兄、グエル・ジェタークを父に対する殺人の罪で、告発します。
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