共に朝を迎えることが何たるかをまだ知らない五条の話②五条弾という男は非常に器用な男である
と、押都はそう見立てている。
黒鷲たる者、影のように目立たず紛れ込み、つつがなく溶けるように人と交わり、抜け目なく情報を拾う。笑みの裏で心に刃を研ぎ澄まし、己を捨てて他人を演じきり、何をしても情報を持ち帰るのが務めだ。黒鷲は生間。生きてこそ任務は完結し、それを欠けばすべては無に帰す。心もまた同じだ。すり減らし、折れてしまえば任務など果たせはしない。
心と頭を切り離せよ心まで削がれれば任務は果たせぬと、身寄りのなくなった五条に親代わりの師として再三厳しく言い育ててきた。
五条はもともと里の外から拾われた子であった。だがその素養は里に根を張り代々黒鷲隊に連なる血筋の者に引けを取らない。むしろ外の風を知っている分、より柔らかく、より器用であった。
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