ボツ文供養:台牧「△□▽◇くん、もうあがっていいよ」
皿を無心で洗っていたらそう背中のほうから声が聞こえて、青年は蛇口をひねり止めてから振り向いた。
「ワイですか?」
「厨房の奥にいた店長にそう問うと、いかにも若い頃はやんちゃしていたようなガタイの良さを誇る男が頷く。
「ああすまん、そうだったな。ウルフウッドくん、あがっていい。お疲れ! また明日頼む」
「こちらこそありがとうございました。お先に失礼します」
律儀に頭を下げてウルフウッドは厨房から出て行く。深夜にしては、いや深夜だからこそにぎわう客席を抜けて店外へ一度出た。
黒髪の上から巻いていたバンダナを取って、着ていたエプロンも脱ぎながら店隣の小屋に入る。そこがこのラーメン屋のスタッフルームだった。
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