今日はこの秋一番の冷え込みらしい。真冬並みの寒さになるからコートを忘れずにと、ラジオの天気予報がしきりに繰り返していた。先週防寒着を洗濯しておいてよかったと胸を撫で下ろしながら、ユウは火にかけたポトフをゆっくりとかきまぜる。
野菜をつつきながら時計に目をやる。もうすぐラギーの帰ってくる時間だ。あとは帰ってくるまで煮込んでいればいい塩梅になるだろう。時間配分が上手くいったことに心の中でガッツポーズを決めた瞬間、タイミングよくがちゃりと玄関扉の開く音がした。
「う~~さみぃっ! ユウくんただいまッス~」
「おかえりなさい、ラギーさん」
火を止めて蓋をしてから玄関に走る。転がるように飛び込んできたラギーが勢いよく扉を閉めて、カチコチに強張らせた身体をぶるりと震わせた。指先どころかぴんと立ち上がった耳の先まで凍りそうだ。真冬はもっと寒いはずだが、ついこの間まで爽やかな秋晴れが続いていたから温度差で余計に寒く感じてしまう。ずび、と音を立てて鼻を啜ると、ユウが伸ばしてきた手が冷えた頬に触れた。
6700