花を手折る ルシアが原因不明の悪夢にうなされるようになったのは、私がルシアに戦利品の一部を差し出した頃からだった。
肌見離さず持っているという、真っ白な宝石の耳飾り。貝の中で育つという真珠なのだけれど、どうやら前の持ち主が念の強い方だったようだ。占い師に見せると、「これは呪われているね」と眉を顰めた。
私が何度手放してくれと言っても、ルシアは言うことを聞かなかった。これは大切なものですからと、常に身につけていた。
「ルシア、どうして手放さないのですか。呪いの耳飾りだと言われているのだから、それは手放してしまわないといけないのに」
「……声が、聞こえるんです。ご婦人の、泣き声が。あともう少しなんです。もう少しで、ご婦人の言葉に耳を傾けられる」
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