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    みつみ|なつき

    @mitsumine_333

    一次創作の表に出せない話とか

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    みつみ|なつき

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    マルミル(攻めの姪っ子)視点コメディ寄りSS
    ヒューズ×ラウル未満(ヒューズ←ラウル)

    #創作BL小説
    creativeBlNovels
    #創作BL
    creationOfBl

    叔父様の受難 私は、久しぶりに叔父様——ヒューズ・ローズガーデンの船に乗せてもらった。船員たちは活気がよく、しかし流行り病には勝てずに命を落としている者もいるようだ。彼らの形見であろう、ベルトを提げている人もいた。
     その中に、見かけない青年がいた。他の船員よりも細く、色も白い。幽霊船から捕まえてきたかのような、儚げな雰囲気を漂わせている。かなりの美形だ。前髪がはらりと耳元に落ち、長いまつ毛が影を作っている。耳飾りは雫の形をしており、時折ゆらゆらと揺れる。この色気に、船員はあてられないのだろうか。と少々不思議に思ったが、叔父様の部下たちだ。そのあたりは徹底しているのかもしれない。
     彼は、一人ぼうっと海を眺めている。肌はきめ細かく、陶磁器のようだ。叔父様たちは、いったい、どこから連れてきたのだろう。
    「すみません、気分でも悪いのですか?」
     私は、思わず彼に話しかけていた。もしかしたら、否、もしかしなくても、彼は敵国の人間だろう。叔父様の船が戻ってきたということは、この青年は価値ある商品としてここにいる。たぶん、今は捕虜という形で船に乗っているのだ。
    「……? あ、いえ、大丈夫です。少し、考え事を」
    「ああ、それは失礼しました。……どこの国か、お尋ねしても?」
    「海底王国、ラケナリアです。海軍にいました。……まあ、俺以外は海に沈みましたが」
     あっけらかんと言う彼は、この状況を憂いていないらしい。繊細な見た目に反して図太いというか、呑気というか。
     船の中は、船員たちの会話で賑やかだ。叔父様が何かを話している。それを、彼らは真剣に聞いている。
     ——なぜか、目の前の青年も。
    「あの、つかぬことを伺いますが、私たち……というか、この船は敵国のものですよ。あなた、売られたりするのは怖くないんですか?」
    「……売られる?」
    「捕われたのでしょう、叔父様の船に」
    「叔父様の船……えっ、ヒューズさんの甥っ子さん!?」
    「え?」
    「え?」
    「ヒューズ、『さん』……? あの、あなたの国では敵に敬称を使うのでしょうか……? あと、すみません、私は姪です」
     分からない。彼の話を聞けば聞くほど、混乱する。翻訳係がほしい。
     ルシアなら彼と波長が合いそうだ、とここにいない愛しい人を思い浮かべていると、叔父様を『ヒューズさん』と呼んだ美形はおかしそうに笑う。
    「敵に敬称なんか使わないですよ。俺はこの船についていくと決めたので、今日からヒューズさんの部下です」
    「…………え?」
    「それにしても、姪っ子さんなんだ。そのコート、すごく似合ってますね」
    「あ、どうも……」
    「そうだ! 姪っ子さんなら知ってるかな……ヒューズさんって恋人います?」
    「……いえ、独り身ですが」
    「ふぅん、そっかそっか。……よし、決めた!」
    「え? あ、あの、まだ叔父様がお話してる途中……!」
     私が止めるのも聞かず、彼は叔父様の元へ走り出す。その瞬間、叔父様が今まで見たことないほど苦い顔をしていた。
    「ヒューズさんヒューズさん! 今! 今あんたの姪っ子さんと話してたんだけどさ、独り身なの?」
    「ラウル、今その話はやめろ。……こらマルミル! 余計なことを話すんじゃありません!」
     モノクルの位置をかちゃかちゃと忙しなく直している叔父様の怒りの矛先が、私に向かってしまった。ただでさえ賑やかな船内が、船員たちの冷やかしの声でますます騒がしくなる。
    「あのラウルって男、船長に一目惚れしたんだとよ」
     呆ける私に、叔父様の部下の一人が楽しそうに囁いた。
     叔父様はラウルという青年に抱きつかれ、それを剥がそうと何やら叫んでいる。叔父様のあのような表情は、初めて見る。
    「ふふ……叔父様、楽しそう」
     すでにこの船の名物となっているのだろう。ラウルは構わず叔父様に懐いているし、船員たちもそれを当たり前のことのように受け流したり囃し立てたりしている。
     何だか微笑ましくておかしくて、笑いを堪えきれなかった。
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