マシュレイ「マッシュ」
「なんでしょ」
ぱたぱたと走ってきたレインが、月色の瞳を瞬かせる。青年の時より大きく見えるそれが綺麗で、しかし赤いほっぺの上であると可愛らしさが勝つ。まあいつもの姿でも、レインくんはすごく可愛いんだけどね。胸中で呟きつつ問いかけると、幼児は短い腕を前に掲げ、下げるようなジェスチャーをした。
…しゃがんで欲しいのだろうか。誂えたシャツの袖をはためかせ、自らの半ズボンの裾をぱしんと叩く。顰め面で口も閉ざしているが、間違いなく何かを訴える小さな恋人に、首を傾げながら膝を折る。確信は無いが、思いつくものがこれしかと、跪いて顔を上げた時だ。
「何かありま、」
ちゅ。
視線を合わせかけた先、至近距離に金と黒の揺らめきを見た瞬間───頬に、柔らかな感触が落ちたのは。
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