未成熟ボーダーライン「なぁ斉士ってちゅーしたことある?」
「は?」
帰宅途中、突然爆弾が落とされた。穏やかな春景色、頭の中も桜満開の話題に眼鏡もスクールバッグもずり落ちる。
「なぁどうなんだよ?したことあんの?」
のし掛かってきた桐ケ谷のせいで肩が重い。興味津々、やたら口調も浮ついて距離も近い。
「どうしてそんなこと」
「こないだクラスのヤツが話してたんだよ」
「人に聞く前に自分はどうなんだい?」
「俺?」
中学生にもなれば多少なりとも色気づいてくるものだ。桐ケ谷も例に漏れずクラスメイトの色恋沙汰を耳にしていたらしい。かく言う刑部も周りが勝手にはしゃぐ声を自分の意思とは関係なしに耳にさせられていた。しかし桐ケ谷もそういった話題に興味を持つとは意外だ。
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