逃避行長い長い暗闇の先に光が見える。
やっと、やっとだ、逃げられたんだ!
握ったデュースの手を更に強く握りしめ、喜びのままに声をあげる。
「デュース!出口だ!」
「……」
「デュース?」
歩みを止め、何かあったのかとデュースの方を振り返る。
だが、そこに、交ちあうはずの緑の目はなかった。目どころか、髪飾りが揺らめく頭も、力の割に細い肩も、薄い腹も、しなやかな脚も、何もない。あるのは、握りしめた手だけ。それも手首の先から徐々に光の粒に解けて、今まさに消えようとしていた。
「は……?」
よく回るはずの頭が停止する。それでも、身体は勝手に動き、これ以上デュースを失うまいと、消えゆく手を両手に握り込んだ。そんな抵抗を嘲笑うように、光は指先の方へ侵食していく。
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