その青いラベルを見た時に、思い出したのは、あの吹雪の日の富永の涙だった。
「ほんとはもっと早くもう一度来たかったんですけどね。思ったよりかかっちゃいましたねェ」
「そうだな。新しいウイスキーが出来るぐらいには」
カラン、とグラスの中で氷が鳴る。二人ともがロックで傾ける飴色は、薄暗い店内で僅かな光を受けて煌めいていた。
二人での二度目の北海道の最後、どこかで一杯呑んで行きませんか、と誘ったのは富永の方だった。
そうして同意したKに、確かこの辺に、と10年は前に行った店を探り当てたのもまた。
あの時と同じものを、と思ってオーダーしたウイスキーは、テレビドラマのブームにより入手困難となっており、新しく作られたレーベルのウイスキーでの乾杯となった。
584