0段目。地べたにしゃがみ込んで談笑する男たち。暇をもてあましているのだろう。
8段目。手すりにもたれかかってナマコフォンをいじるゲソの長い女。たぶんナンパ待ち。
15段目。ブキを背負って熱心に話し合うグループ。これからバトルなのかも。
27段目。死んだ目でのそのそと下りてくる2人組。商会でよく見る顔。
ロビーに続く階段を見上げていた。
32段。今まで数えたこともなかったし、毎日当たり前のように上り下りしていて特別に意識することなんて一つもない。なかった。でも、こうやってあらためて俯瞰してみるとなかなかに厳しい高さだと思った。少なくとも今の俺たちにとっては。
「裏通りから行こうか。少し遠回りだけど」
俺は隣に立つ連れを一瞥することもなくそう提案した。相手が口を開くまえに「今日は無理しないでおこう。また今度、頑張ればいい」と付け足す。
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