目は全てを物語った1
人が賑わう港街、赤街。
この国で最も栄えた街であり、他の街と比較して、圧倒的に人口が多い。
買い出しのためそこを訪れていたが、人の多さに目が回るようであった。
けれども、活気の溢れるその空気は、地元にはないものであり、彼──アールバはそれが嫌いではなかった。むしろ好きであり、晴れた休日にこうして街中を歩くのは気分が良く、心も晴れるようであった。
このような時は決まってゆるゆると街を見て周り、茶房に寄ってみたり、古びた本屋で掘り出し物がないか見たりする。
日々変わりゆく街は何度見ても飽きないものであり、彼はこうして過ごすのが好きだった。
ところが本日は、いつものようにゆったりと見て回る時間は多くなかった。
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