「もーーーイヤニャーン……」
ぺたりとテーブルに頬をくっつけてぐったりとしているあの子に作りたてのレモネードを差し出す。ガス周りのチェックの為に閉めている店内だからか、普段の『アイドル・まきみきのミキ』ではなく素顔の彼女が疲れ果てた様子は、なんとも自分にもくるものがある。
「なぁに、またあのマネになんぞ無茶振りされたんかい?」
「それもありますけど……、あのアイドルのテンションに疲れちゃったって言いますか……」
ず、とストローでレモネードを飲む様子は幼い頃と相違無く、人気アイドルとして振る舞う底にかつてのあの子が残っている事がどれだけワシの救いになっとるかなんて、きっと知らんのじゃろな。
だから何となく、本当に何となく、ポツリと思った事がこぼれ落ちた。
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