おはようさよならもう二度と 目の前の女の表情に、諦念の中にほんの少し期待がある、と分析できるのがもう嫌だった。
「付き合わない?」
たったそれだけの言葉のために、どれだけ心の労力を使っただろう。どうせ無駄なことはお互い解っている。いや、向こうは解りきっていないからこういうことを言うのだ。
真瀬康介の家に女を一人連れ込み、一晩を共に過ごしたあとの朝だった。女の後にシャワーを浴び、暑さが抜けないのでボトムスだけ適当に履いて部屋に戻ってきたところだった。女はすっかり昨日の服を綺麗に着込み、化粧まで終わっていた。汚れたシーツの上ではなく、カーペットの上に座っている。
康介はあー、と唸りながら頭を掻いた。
「や、付き合うとかはないから」
2655