雨の音さえ本屋を出ると、曇っていた空から雨が降ってきていた。天気予報、一日曇りだったのにな。念のため持って来ていた傘を拡げる。
そういえば、真次、そろそろ泊まり出張から戻るんじゃねえの。
そう思ってスマホを見ると、もうすぐ駅に着きます、と着信が入っていたので帰らず駅まで足を伸ばすことにした。
「お帰り、お疲れ。」
「はい、ただいまもどりました。」
改札で会い、階段を降りると、
「私が持ちます。」
傘に手を差し出される。
折畳み傘くらい持ってるんじゃねえの、とか、一週間泊の手荷物の上に傘もかよ、と思ったが口に出さなかった。どうせああだこうだ言われて傘を手渡すことになるから。
「ほい。」
急な雨のせいか、人通りが少ない。傘に雨があたる音がパツパツと響く。
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