思い寝「これ、寝てるのか?」
「……寝てる。」
机を枕に突っ伏してしまっている片切を目の前に、聡音と顔を見合わせた。
息子と思って大事にしていた片切友一とは、ある出来事があってからほとんどの接触をメールか電話で済ましていた。
「顔を見ると甘えてしまうし、距離が近いと利用したくなるから」とはっきり言葉にして伝えて来て、それでもかなり頻繁に連絡をくれるようになった。親なんて、利用するだけ利用して勝手に独り立ちして行けばいいのに、と思わないでもないが、その意思を尊重し、自宅に会いに出向く事も控えていた。
その「息子」が大学に合格した、と照れくさそうに自宅まで報告に来た。
バイトをしながら学費を貯金し、さらに高卒認定から入試の勉強――金銭的な援助は断固拒否された。
2008