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    ことにゃ

    @kotonya_0318

    各種サイトで細々と活動中。19歳。
    いろいろ垂れ流してます。うちの子語り多め。
    詳しくはツイフィール(twpf.jp/kotonya_0318)の確認をお願いします。
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    ことにゃ

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    明日を変えたかった小さな嘘をついた。本当に、小さな小さな、世界が回るにはなんの影響もないような嘘だ。明日以降、毎日を送る誰かの生活が変わることもない。本当に、世界から見たら些細な嘘だ。

    けれど、「私」という世界から見たら、どうしようもなく大きい嘘だった。

    「好きな人、いる?」

    何気ない質問だ。思春期の学生からしたら、何気ないどころかよくある質問だ。それに、私はらしくも無く動揺した。

    「いいや、居ないよ」

    それを答えるまでに、どれだけの時間がかかっただろう。どれだけの沈黙があっただろう。きっと、それまで長くは無かったはずだけど。だって、彼から、首を傾げられるだとか、そういう反応は無かったはずだし。
    それでも、その短い間に私はたくさん考えた。
    正直に言うべき?それとも誤魔化すべき?正直に「居る」と答えて、誰だと追及されたら?
    それが、君だよと言う勇気は、悲しいことに私には無かった。

    だから、居ないよ、なんて嘘をついた。私が、意気地なしだったから。仕方がないことだった。
    ……それに、もし。居る、と答えたとしても。彼になんて言われるかなんて、目に見えてる。「意外」。きっと、感想はそれだ。だって、自分でも思う。私が、人を好きになるなんて。意外を超えて、天変地異が起きたっておかしくない。
    けれど、どうしてだろう。私はいつの間にか、こんな私を面白がって話しかけてくる彼に、恋をしていた。
    私が、恋だなんて、笑わせる。けれど、一年間かけて確かめたこの感情は、間違いなく恋だった。
    話しかけられるたびに、嬉しいと思うのも。
    今日は話しかけてくれるかな、とそわそわしてしまうのも。
    クラス替えの時、同じクラスになりますように、なんてらしくも無く神頼みなんてことをしたのも。
    きっと、とか。おそらく、なんて単語を使うことすらできないくらいに、この感情は恋だった。

    はぁ、と一つため息を零す。ほんとうに、なんで私は「居ない」なんて言ってしまったのだろう。いいや、分かってる。私に、勇気が無かったから。分かってるんだ、そんなこと。
    ……私に勇気があったら。或いは、私がもっと普通の、「女の子」だったら。きらきらしてて、柔らかくて。もしそうだったら、可愛らしく、「居るよ、誰だと思う?」なんて言えたんだろうか。

    そこまで考えて、頭を振る。そんなこと、考えたってしょうがない。もう何度も一人で繰り返した問答だ。私は私で、そもそも私がこんな私だったから、彼は私に話しかけてくれたのだ。こんな私じゃなかったら、彼と接点が出来ることだって無かった。だから、私は私のままでいいのだ。

    何度も繰り返した問答に、また同じ答えを出して一度思考を止める。ああもう、いけない。こうやって考え込んでしまうのは、私の良くない癖だ。
    ごくり、手元に置いてたコーヒーを一口飲む。心地良い苦みが伝わってきて、ほうと一つ息を吐いた。机にそれを戻せば、コーヒーカップの中に写り込んだ自分が目に入る。
    ……可愛らしい、「女の子」だったら。コーヒーなんて好まないんだろうか。有名コーヒーショップの訳が分からないくらい甘い、生クリームたっぷりの飲み物や、今流行りのタピオカなんかを好むんだろうか。どちらも、一度は試してみたけれど、私には合わなかった。その時も確か、ああ私は「女の子」にはとことん向いていないらしいと苦笑した覚えがある。

    ああもう、まただ。自分が同じようなことを考え始めていることに気付いて、ぐじゃりと自分の前髪をかき上げる。自分を落ち着かせるために、ふうと長く息を吐いた。

    だから、私は、私だったから、彼に興味を持ってもらえたのだ。分かっているだろう。私が、私じゃなかったら、今の関係だって無かったんだ。それは、彼に恋愛対象として見てもらえないことより辛いことだ。
    何度だって、自分に言い聞かせる。
    私は、私のままでいいのだ。

    ……それでも、やっぱり願わずにはいられない。私が、普通の「女の子」だったら。私に、もう少しの勇気があれば。そうしたら、明日は変わっていたかもしれないのに。

    だから、誰に言うでもなく、一人呟いた。

    「……ああ、気が重いね」
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